    大草原のローラの仲間

    ローラ・インガルス・ワイルダー
    その作品と生涯におけるゆかりの人々

ローラの家族

INDEX 親戚ウィスコンシンカンザスミネソタアイオワダコタフロリダ・… ミズーリ

とうさん（チャールズ・フィリップ・インガルス）
Charles Phillip Ingalls

   ローラの父。
  チャールズ・フィリップ・インガルスは1836年１月10日、ニューヨーク州キューバで９人兄弟の２番目として生まれる。父はランスフォード・インガルス、母はローラ・コルビー。
  若い頃、一家でニューヨーク州からイリノイ州を経てウィスコンシン州ジェファーソン郡へ移住。そこでキャロライン・クアイナー（かあさん）と知り合い、1860年にコンコードで結婚する。

  1863年、チャールズとキャロラインはランスフォードの家族と離れ、ウィスコンシン州ペピンの広葉樹の大きな森へ入植、ここに丸太小屋を建てて暮らすことになった。隣の土地には義弟のヘンリーとポリー夫婦がいて、互いに助け合って農地を開墾した。この森でメアリーとローラが生まれる。
  1869年になって、チャールズは大草原に土地を求め、一家でカンザス州のインディアン・テリトリーに移動するが、結局うまくいかず、ペピンの大きな森に戻る。

  1874年には再び大きな森を離れてミネソタ州のプラムクリークへ移住。小麦栽培に挑戦するが、運悪く収穫前にバッタの大群が２年続きで襲来、収入源の小麦が完全に食い尽くされてしまったため、農業をあきらめるしかなかった。
  新たな仕事を求めたチャールズは、知人に誘われホテルの共同経営者としてアイオワ州バー・オークへ移動する。しかし、バー・オークでは、一時しのぎの仕事しか得られなかった。そこで１年後の1877年秋、再びミネソタ州へ帰り、ウォルナット・グローブで肉屋や大工仕事をやって生計を立てていた。

  姉のラドーシアが仕事を持ってきてくれたのは、1879年のそんなときだった。シカゴ・ノースウエスタン鉄道会社が路線をダコタ準州まで延長する計画があり、工事現場のマネージャーを求めていたのだ。ダコタ・テリトリーへ行けば、自作農地を取得できるかもしれない。チャールズは最後の移住を決意して出発。９月にはローラたち家族も後を追った。

  鉄道の仕事を終えシルバー湖畔で冬を越したチャールズは、年が明けると自作農地の申請を済ませ、新しいデ・スメットの町に家を建て始める。その暮れの冬は、まれに見る猛吹雪を経験したが、農場や町の仕事も次第に軌道に乗ってきた。娘たちは学校に通い、チャールズも農作業の合間に町で大工仕事に精を出し、治安判事や学校委員を引き受けたり、組合教会の設立に尽力して、初期の町の発展のために働いた。

  やがて、デ・スメットの町で娘たちは成長する。ローラは先生になり、結婚。その後、チャールズは町で暮らすことに決めて、農地を手放し、３番通りに家を建て、増築した。娘たちのうちメアリーはアイオワの盲人大学を卒業して帰ってきたが、ローラ夫婦はミズーリヘと去り、キャリーは学校を出て新聞の仕事に就き、グレースもマンチェスターで先生になっていた。
  しかし、年を経て積年の無理が応えたのか、その頃チャールズの健康状態は日増しに悪化していた。そして末娘のグレースがとうさんの家で結婚式を挙げた翌年の1902年、心臓病のため、チャールズはローラたち家族に見守られながら66歳の生涯を閉じたのだった。

かあさん（キャロライン・レイク・クワイナー）
Caroline Lake Quiner

  ローラの母。
  キャロライン・レイク・クワイナーは1839年12月12日、ウィスコンシン準州のミルウォーキ郡で生まれる。父親はヘンリー・ニュートン・クワイナー、母親はシャーロット・タッカー・クワイナー。
  ７人兄弟の５番目だが、最初の女児が４歳ほどで亡くなったので、実質的には次女の役割を担うことになる。
  キャロライン満４歳の秋、父ヘンリー・クワイナーが事故で亡くなる。
  そのため生活は困窮するが、一家でジェファーソン郡へ移り、10歳のとき母親が再婚してようやく家庭が落ち着いた。学校にも通い、1856年春、教員の資格試験に合格。16歳で卒業後、自分たちが通っていたコンコードの学校で教えた。
  1860年２月１日、ウィスコンシン州ジェファーソン郡コンコードでチャールズ・フィリップ・インガルスと結婚。1863年、ペピンの大きな森に住んだ。
  メアリーとローラが誕生後は、新しい農地を求めるチャールズを助け、娘たちと共に幌馬車でアメリカ中西部の各地を転々と移動。その間、キャリー、フレディー、グレースが生まれる。
  1879年、ダコタ・テリトリーへ入植し、自作農地からやがてデ・スメットの町に定住するようになり、そこで亡くなるまで、町の人たちや家族たちと活動的に、また穏やかに暮らした。1924年没。84歳。
  かあさんとメアリーは作家として活躍し始めたローズのことは知っているが、この頃、ローラはまだ地方新聞に農家の記事などを書いていた時期だった。

メアリー（メアリー・アミリア・インガルス）
Mary Amelia Ingalls

  ローラの姉。
  1865年１月10日、ウィスコンシン州ペピンの大きな森の小さな丸太小屋で生まれる。とうさんかあさんについてカンザスの大草原に行った後、ペピンに戻り、ミネソタ州のプラム・クリークへ移住。ウォルナット・グローブの学校や教会に通う。行儀がよく、勉強のできる優等生だった。
  しかし、バー・オークから帰ったウォルナット・グローブ時代の1879年の春に急に高熱が出て病気になり、治療の方法もなく視力を失ってしまう。14歳の時だった。それは本人はもとより家族にとっても悲しい出来事だったが、それでもメアリーは辛抱強い抑制心を持って、この不運を受け入れた。
  そして1881年秋、デ・スメット移住後の16歳の時に、メアリーはオルデン牧師から話を聞いていたアイオワ州ヴィントンにある盲人大学に入学する。牧師の親戚の人がそこで教えていたのだった。
  大学生活は全寮制でメアリーは女子寮に入って生活した。メアリーが入学した年は94人の学生が学んでいて、大学の生活は規律正しく厳しかったが、ささやかな楽しみもあったという。
  大学では博物学、歴史、化学、代数、政治経済学、生理学、修辞学を学び、また、ピアノとオルガンの演奏、手芸、裁縫、編み物、ビーズ細工などを習得。1889年、24歳で卒業した。
  1889年卒業後はデ・スメットのとうさんの家に戻り、組合教会に出席したり、特技を生かしながら、家族、特にかあさんとは長く心豊かな生活を送った。とくにオルガンの演奏は上手だった。ビーズ細工も家族が驚くほどうまく、ハンモックや箒作りも習っていたので、箒を作ってとうさんの店で売り、とうさんが亡くなった後も家計の足しにしたりした。
  1924年にかあさんが亡くなった後はグレースが面倒を見てくれていた。しかし、キャリーの許で暮らすことになり、1928年10月17日、キーストーンのキャリーの家を訪れた時、急病になり、しばらくしてから没する。63歳だった。デ・スメットに眠る。

ローラ（ローラ・エリザベス・インガルス）→（ローラ・インガルス・ワイルダー）
Laura Elizabeth Ingalls → Laura Ingalls Wilder

  ”小さな家”シリーズの著者。
  南北戦争後の1867年２月７日(木)、ウィスコンシン州ペピン郡の森の丸太小屋に生まれる。父親はチャールズ・フィリップ・インガルス、母親はキャロライン・レイク・クワイナー。父方の祖母の名にちなんでローラと名付けられる。姉に２歳上のメアリーがいた。
  ２歳の時にカンザス州の大草原に一家で旅し、小さな丸太小屋に住む。そこはインディペンデンスから南西へ20キロのオーセージ族の居留地だった。そこで妹のキャリーが生まれる。

  一度大きな森へ戻った後、今度はミネソタ州のプラム・クリークへ移住。ローラ７歳の時だった。最初はクリークの土手の横穴の家に住んだが、やがて、とうさんが板張りの家を建てた。ローラとメアリーは３キロの道を歩いてウォルナット・グローブの学校に通い、少しずつ友達もできた。
  しかし、とうさんの仕事の都合で一時、アイオア州のバー・オークへ移ることになる。弟のフレディーが亡くなるなど悲しい出来事もあったが、グレースが生まれ、友達やいい先生にも巡り会えて、ローラはけっこう楽しい時を過ごした。
  そして、１年後にはウォルナット・グローブへと戻るが、姉の失明というつらい出来事が待っていた。それからのちのローラは、とうさんの言いつけに従って、メアリーの目の役割を担うことになった。

  1879年、とうさんはダコタ準州の鉄道敷設の現場で働くため最後の移住を決め、ローラたちも少し遅れてとうさんの許へと移る。そこで厳しい冬を経験したが、とうさんの申請していた自作農地と新しくできたデ・スメットの町で暮らしながら、キャリーを連れて学校に通い始める。仲のよい友達もできて、ローラはよく勉強し、少し勝ち気だが、活発で、成績も優秀な生徒だった。やがて、15歳で教員の資格を取り、開拓村や近くの小さな学校でしばらく教鞭を執る。そんなとき、彼女は同じ時期にミネソタから入植してきたアルマンゾ・ワイルダーと交際するようになり、1885年、18歳で結婚。

  しかし、大平原の農地での４年間は２人にとって厳しいものだった。収穫直前の小麦が雹に叩かれ、ジフテリアでアルマンゾの足は不自由になった。乾燥で作物は実らず、重なる借金にローラは頭を抱えていた。せっかく産まれた男の子も20日ほどで亡くし、ストーブの火が燃え移って家が焼失してしまったため、二人はそこでの農業をあきらめて移住を考えざるを得なくなった。最初に生まれた娘のローズだけが、二人にとって救いだった。

  そこで夫婦は1890年、療養をかねてミネソタ州スプリング・ヴァレーのアルマンゾの両親の農場に１年間滞在。さらにいとこのピーターに誘われ汽車でフロリダに移住するが、環境が合わず10ヶ月ほどでデ・スメットへ戻る。
  デ・スメットの町でアルマンゾはいろいろな仕事を見つけ、ローラは洋裁店で働いて生活を切りつめ、100ドルのお金を貯めていた。

  そして1894年夏、いよいよミズーリ州の「大きな赤いリンゴの土地」へ移住を決意。馬車で１ヶ月半掛けてマンスフィールドに到着し、ロッキーリッジ農場を手に入れる。農場には前の持ち主が買った400本のリンゴの苗木が残されていた。
  夫婦は農場を成功させるために懸命に働いた。ローズも学校に通い出した。アルマンゾは農場が軌道に乗るまで町の家を借りて荷馬車の仕事も始めていた。
  1902年になって、とうさんの病気が重くなり、ローラは急いで汽車でデ・スメットに向かわなければならなかった。６月にとうさんは亡くなり、ローラへの形見は、あのヴァイオリンだった。そして、そのときの旅が、ローラがメアリーとかあさんに会った最後でもあった。

  やがて、ローラ夫婦はロッキー・リッジ農場の家を本格的に建て進め、新しい家は1913年秋に完成する。
  ローラは農場の仕事にいそしむ一方で、1911年頃からミズーリの農業新聞などに、農家の主婦としての生活記事を時々、寄稿し始めていた。1915年にはサンフランシスコで働いていたローズ夫妻を訪ね、パナマ太平洋国際大博覧会を見物。1925年秋にも、カリフォルニアへの旅行をした。
  そして大恐慌後の1930年、思い立って辺境時代の思い出（『開拓地の少女』Pioneer Girl）を一人称で書いてみた。また「おばあちゃんが子どもだった頃」と題して、ウィスコンシン時代の暮らしを童話にまとめた。これを長い物語に書き直したのが、ローラ最初の作品『大きな森の小さな家』だった。この本は、作家になっていたローズの助力を得て、1932年にハーパー・アンド・ブラザース社から出版されることになった。

  その前年にローラ夫妻は、旧開拓者の集まりに出席するためデ・スメットに旅する。その頃はインガルスのとうさん、かあさん、メアリーはすでに亡くなっていたが、グレースとキャリーに会えた。
  『大きな森の小さな家』は好評で、1933年『農場の少年』、1935年『大草原の小さな家』、1937年『プラムクリークの土手で』と相次いで出版、大きな反響を呼んだ。1939年『シルバー湖のほとりで』を出版。この間、２度デ・スメットを訪れる。1940年『長い冬』、1941年『大草原の小さな町』、1943年『この輝ける時』を出版、シリーズの完結とした（1930年代に書かれたであろう『最初の四年間』はローラとローズの没後、発表された）。

  1949年に長年連れ添った夫アルマンゾが亡くなった。ローラは淋しかったが、1950年、ミズーリ州の便覧に有名な州民のひとりとして掲載され、1951年、ライト郡公共図書館のマンスフィールド支部が「ローラ・インガルス・ワイルダー図書館」と命名されるなど、このころのローラは作家として高名になり、子どもたちからもたくさん手紙が届いた。
  1953年10月、ハーパー社がガース・ウイリアムズ挿絵の新シリーズを出し、1954年、アメリカ図書館協会がローラ・インガルス・ワイルダー賞を創設、その第１回受賞者となっている。

  晩年のローラはほとんど農場で過ごしていたが、毎週水曜日には町に出て会話、昼食等を楽しみ、日曜日にはドライブにも積極的に出掛けた。農場を訪れる人も多く、ローラは歓迎した。ローズも毎年、農場を訪れてしばらく滞在していった。代わりにローズと共に飛行機でダンベリーのローズの家も訪れた。
  しかし、1956年頃から糖尿病が悪化し、1957年２月10日、誕生日の３日後に、ローラは90歳で永眠する。

   ローラの作品は当時からアメリカの子どもたちに広く読まれ、ドイツや中国や日本でも翻訳されていた。日本では昭和50年(1975年)からNHKが放映した米NBC制作の海外テレビドラマ「大草原の小さな家」で一般にも広く知られるようになり、現在でもその放送は繰り返し続いている。それと共に、シリーズや関連の書籍も数多く出版されるようになっている。

キャリー（キャロライン・セレスティア・インガルス）
Caroline Celestia Ingalls

  ローラの次の妹。
  1870年８月３日、カンザス州モントゴメリ郡のインディアン居留地で生まれる。その後、メアリーやローラと共にペピンの森、プラム・クリーク、バーオーク、ウォルナット・グローブ、デ・スメットと、一家で移住の旅をして各地をめぐった。
  10歳の頃やっと落ち着いたデ・スメットの学校で学び、卒業後は３番通りの家でとうさん、かあさん、メアリー、グレースと一緒に暮らしながら、デ・スメット・ニュース・アンド・リーダー社で長年働き、印刷の技術を覚え、家計を支えた。デ・スメットの町ではサイクリング、テニス、教会の仕事、婦人クラブなどにも積極的に参加する。
  とうさんが亡くなった翌年の1903年、オウザークにローラ一家を訪ねる。
  また、サウス・ダコタ西方に自作農地を申請し、1905年から1908年までの間は１年のうちの半年を農地で暮らし、半年をデ・スメットで暮らして、土地を取得できるよう頑張った。
  1911年、新聞チェーン所有者のＥ・Ｌ・センの許で新聞業を始め、サウス・ダコタ南西部ラシュモア山麓の鉱山町キーストーンに来る。そこでブラック・ヒルズの鉱山経営者をしていたデイヴィッド・スウォンジーと1912年に結婚、キーストーンに住むようになる。
  夫にはメアリーとハロルドという先妻の子どもたちがいて、キャリーは彼らの義母にもなった。結婚後も、教会で日曜学校の先生などをする。
  1938年にローラとアルマンゾが２度目にキャリーを訪ねてきたときは、夫のデイヴィッドが少し前に他界したばかりで淋しい思いをしていたので、キャリーはローラたちの訪問を喜んだ。
  キャリーは1944年秋にもマンスフィールドにローラを訪ねている。
  1946年６月２日、サウス・ダコタ州のブラック・ヒルズの町、ラピッド・シティで没する。75歳だった。デ・スメットに眠る。

フレディー（チャールズ・フレデリック・インガルス）
Charles Frederick Ingalls

ローラの弟。
1875年11月1日、ミズーリ州ウォルナット・グローブの教会後ろの家で生まれる。一家がバー・オークへ移動する途中で夏を過ごした、とうさんの兄ピーターの農場の家で急病になり、1876年８月27日(日)亡くなる。ザンブロ川南のサウストロイの町近くにある、子どものお墓に埋葬されたとされている。

グレース（グレース・パール・インガルス）
Grace Pearl Ingalls

  ローラの一番下の妹。
  1877年５月23日、アイオワ州バー・オークの町はずれの赤レンガ造りの家で生まれる。金髪で、明るい、青い目をした女の子だった。
  デ・スメットへ移住後の学校時代はローズをよくかわいがった。時々、日記もつけていて、貴重な資料になっている。学校卒業後は大学の教員養成コースを終え、近くのマンチェスターの学校で教える。農夫のネイサン（ネイト）・ダウと知り合い、1901年10月にインガルスの父母の家で結婚。11キロ離れたマンチェスター郊外の夫の農場で暮らすようになる。
  しかし、結婚翌年の６月８日に、とうさんが亡くなった。グレースはデ・スメットの父母の家に近いため、よく訪ねていたし、とうさん、かあさん、メアリーもグレースの農場に何度かやって来た。ローラ夫婦も後年、２、３度グレースの許を訪ねてきたことがある。
  1919年、グレース夫婦はデ・スメットのかあさんの家に引っ越し、家族といっしょに暮らすことになった。デ・スメットに引っ越したのは、年老いて弱ったかあさんとメアリーの面倒を見る必要があったためだろう。しかし、再びマンチェスターに戻ったようだ。
  経済不況のせいもあったのだろうか、グレース夫婦の生活は、金銭的には概して苦しかったらしい。生活保護を受けた時期があり、ローズのところへも無心の手紙などを送ったことがある。
  1939年ころは「ヒューロン・デイリー・プレインズマン」紙の通信員をしていて、ローラ夫婦に関する情報などを寄せている。
  1941年11月10日、夫とキャリーに見守られながら、マンチェスターで心臓病のため亡くなる。64歳だった。デ・スメットに眠る。

アルマンゾ（アルマンゾ・ジェームズ・ワイルダー）
Almanzo James Wilder

  ローラの夫。
  1857年２月13日、ニューヨーク州マローン近郊の農場に生まれる。父はジェイムズ・ワイルダー、母はアンジェリン。３男３女の次男だった。
  13歳のころ西のミネソタ州スプリング・ヴァレーへ移住。1879年に兄のロイヤルとダコタ・テリトリーへ入植して、デ・スメットの北の大草原に申請農地を持った。冬はミネソタで越したが、春にまた戻り、1881年の冬はロイヤルの飼料店にいた。ローラの『長い冬』には、雪の大草原へ小麦の買い付けに行ったアルマンゾとキャップ・ガーラントの勇気ある行動が書かれている。

  デ・スメットの町でローラと知り合い、1885年８月25日結婚、娘のローズが誕生した。樹木農地に住むが、1888年、夫婦がジフテリアに罹り、アルマンゾの身体に麻痺が残る。農業経営が難しくなったアルマンゾは自作農地を売り、再び樹木農地に移って羊を飼う。1889年生まれた男児を亡くし、火事で家財を焼失。相次ぐ不運と大平原の過酷な環境に苦しめられ、移住を考えなければならなくなった。

  1890年、療養を兼ね、ミネソタ州スプリング・ヴァレーのアルマンゾの両親の農場に１年間滞在。さらにローラのいとこのピーターに誘われフロリダに移住するが、環境が合わず10ヶ月ほどでデ・スメットへ戻る。このころ農作業は無理で、町で雑仕事を見つけて働いた。

  1894年「大きな赤いリンゴの土地」に未来を賭けてミズーリ州に移住するため、家族と幌馬車で出発。運良く40エーカーのロッキー・リッジ農場を手に入れて開墾を始め、リンゴを植え付ける。農場の経営が軌道に乗るまでの間は、農作業のかたわら、町の家を借りて運送業などをして働き、少しずつ土地を買い足して農場を広げた。

  1909年、成長したローズがサンフランシスコで結婚。1910年、アルマンゾは両親から遺産をもらったのを機会に町の家を売り、農場の暮らしに戻った。ローラに設計図を書かせ、1913年に農場の家が完成。農場経営に精を出す。リンゴの木も１本から樽３個分が取れるほど太り、家畜や穀物も立派に育って、ロッキー・リッジは模範的な農場になっていった。
  1915年にはローラがサンフランシスコのローズを訪れ、博覧会の様子などを手紙で書いてよこした。1923年、ローズがヨーロッパ旅行から帰り、彼女の友達も来て、農場がにぎやかになる。アルマンゾ夫婦も教会やクラブなど地域のいろいろな集まりに参加した。

  1925年、アルマンゾは68歳の時、ローズが買ったビューイック車の運転を覚え、夫婦の行動範囲は広がったが、アルマンゾ自身は家畜の飼育や木工が上手で、概して静かな生活を好んでいた。
  だが、次第に年を重ねると、農場の仕事が困難になってきた。そこで1928年、ローラとローズの勧めに従って農作業の大部分を雇い人に任せ、第一線から手を引くことにした。このころ、ローズが農場に建てた新しい石造りの家が両親にプレゼントされる。元の家はローズが使うことになった。
  アルマンゾはそれでも小動物を飼育したり、１エーカーほどの穀物は作っていた。もちろん、好きなモルガン種の馬はずっと飼っていたし、町へ出掛けて友達と話す機会も多かった。

  1931年には、ローラと共に、移住以来初めてデ・スメットの町を訪れる。1932年、ローラの『大きな森の小さな家』が出版され、今度はアルマンゾの物語を書くことになった。そこでアルマンゾはローラの質問に答えて、マローンの農場にいたころの少年時代の楽しい出来事を少しずつ話してやった。
  1937年にはローラがデトロイトで講演を依頼されたので、サイラス・シールの運転する車で同行する。1938年、サイラス夫婦と４人で西海岸からサウス・ダコタの旅に出、翌年はアルマンゾの運転で、夫婦だけで移住者の祝賀行事にも出席。なつかしい大草原を見て回った。

  晩年はローラの出版の収入もあって、農場のほうはやらなくても生活には困らなかった。モルガン種の馬は手放したが、それでも山羊を飼ったり、菜園を作ったり、木工細工をしたりして楽しんだ。車の手入れも怠らなかった。夫婦は農場を訪れる人をよく歓迎した。アルマンゾは杖をつき、ズボン吊りを使用して、口ひげを蓄えていた。独立心が強く、何でもよく知っていて、ちょっとしたジョークを飛ばすのが上手な人だった。しかし90も超えた1948年、農場をショーター夫妻に条件付で売却。1949年10月ローラに見守られ、心臓発作で没する。92歳だった。

ローズ（ローズ・ワイルダー・レイン）
Rose Wilder Lane

  ローラとアルマンゾの一人娘で作家。ジャーナリスト。
  1886年12月５日夜、ダコタ準州デ・スメットの北１キロ半にある自作農地で、ローラとアルマンゾの娘として誕生。大草原の野バラにちなんでローズと名付けられた。ローラとアルマンゾがジフテリアに罹ったときは、町の祖父母の家で暮らしていた。

  ７歳の時、両親とミズーリ州マンスフィールドに移住。移住後は土地の学校に通い、卒業後は父の姉イライザ・ジェーンのもとにいて１年間、高校でラテン語を学ぶ。優秀な生徒だった。高校卒業後、マンスフィールドの駅長に電信技術を習い、17歳の時、ミズーリ州のカンザス・シティで電信技手の職に就いた。

  各地を旅行し、サンフランシスコでジレット・レインと出会って1909年に結婚する。その後ライターとして「カンザス・シティ・ポスト」に雇われ、二人でカンザス・シティに移った。1910年男子ができたが、すぐに亡くなる。
  傷心の夫婦は一度ローラの農場を訪れた後、再びカリフォルニアに戻り、ジレットと二人で不動産売買の仕事に就く。1915年頃には「サンフランシスコ・ブリティン」紙の記者になった。同年、サンフランシスコ万博にローラを招待し、ローラは２か月間滞在。

  1918年、ジレットと離婚。作家としての道を歩み始める。
  1920年、赤十字の仕事でパリへ行き、足かけ４年、ヨーロッパやアジアを旅し、1923年暮れにロッキー・リッジの両親の許に帰る。
  1926年、友人のヘレン・ボイルストンと共にパリのソルボンヌ大学で語学を勉強し、アルバニアで暮らしたあと、1928年、再び農場に戻る。このときローズは両親に新しい家をプレゼントした。

  1930年の大不況の頃、ローラに開拓時代の思い出を作品にするように勧め、自らも大いに助力をし、以後、二人の葛藤と協力関係は後年まで引き続いて、ローラの『小さな家』シリーズを世に送り出すことに寄与した。

  1933年『大草原物語』（Let the Hurricane Roar）出版。７年半、両親の元の家に住んでいたが、1935年、コロンビアのミズーリ州立大学で歴史的調査研究をするため農場を出て、その後はアルマンゾが亡くなるまで両親の元を訪れなかった。
  1937年ニューヨークに移り、1938年『自由の大地』（Free Land）出版。その後ニューヨークからコネティカット州のダンベリーに落ち着いてそこで暮らした。
  1949年にアルマンゾが亡くなってからは毎年ロッキーリッジのローラの元を訪れて、しばらく滞在して帰っていった。

  1957年のローラの没後、1962年にローラの遺稿『わが家への道～ローラの旅日記』を出版する。
  79歳頃、女性誌から依頼され、戦地特派員としてベトナム戦争を取材。81歳でなお世界一周旅行を計画したが、その前日の1968年10月30日に、ダンベリーにおいて心臓発作で永眠する。
  マンスフィールドの両親の墓近くに眠っている。

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INDEX 親戚ウィスコンシンカンザスミネソタアイオワダコタフロリダ・… ミズーリ

（2016.02.16より）